熊本地震から来月で1年となる。一般に、発災からの節目を刻む時、被災者が「記念日(アニバーサリー)反応」を起こす恐れがあるという▼記念日反応とは、身近な人の死や災害などに直面した人が、その出来事のあった日の前後に、つらい体験や悲しみを思い出し、不眠や落ち込みなど心身に不調を来すこと。心的外傷後ストレス障害(PTSD)に特徴的な反応の一つである。一見、落ち着いた生活を取り戻したように見える人や、精神的苦痛を感じた自覚をもたない人でさえ、こうした反応を示す場合があるといわれる▼これを防ぐ重要な対処法の一つが「周囲とのつながり」を深めること。家族や親しい友人と語り合うことはもちろん、地域の人々と協力した過去の記憶を呼び起こすだけでも効果があるという▼熊本の婦人部員は、この一年、被災した友に寄り添うことに徹してきた。先月も、震災で心身を患い、半年ほど家にこもっていた友が、彼女をはじめ学会家族の支えで、外出することができた。「私も被災者の一人ですが、師匠や同志の励ましで立ち上がることができました。ご恩返しです」と彼女は言う▼蓄積された記憶はさまざまだからこそ、じっくりと相手の話を聴くことが大切だ。心通う対話で、地域の絆を強めたい。(剣)