少年は、物理の授業の前に思った。“これは、本当に自分のやりたいことなのか”。答えは「ノー!」。退学を申し出て美術学校に入り直してしまう▼だが親は反対しなかった。「母は、わが子にとって何が一番幸福か、判断してくれたのです。『あなたが好きな道ならば、しっかり頑張りなさい』と」。絵の技術は平凡だったが、努力を重ね、夢をかなえた。少年は、世界的な絵本画家になったワイルドスミス氏である▼池田先生と対談した氏は、先生から「子どもが心の奥底で一番求めているものは?」と問われ、「幸福です」と即答した。第32回少年少女希望絵画展(創価文化センターで4月8日まで)を鑑賞して、それが心から納得できた▼ある少女部員は笑顔皺を寄せる祖父を描いた。説明書きには、「私はおじいちゃんにも幸せになってほしい、そしていつもおじいちゃんの笑顔を見ていたい」と。会場には、紛争が続くシリアの子どもたちの作品もあった。鳥が歌い、花が舞う、昔日の平和な生活を描きつつ「世界のみんなが幸せに」との思いを伝える▼御書に「喜とは自他共に喜ぶ事なり」(761ページ)と仰せだ。子どもたちは知っている。本当の幸せとは何かを。皆が幸せにならなければ、私も幸せになれないことを。(之)