小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 誓願 四 2018年3月29日

スポンサーリンク

法悟空 内田健一郎 画 (6334)

六段円塔の二段目のメンバーが、上に十九人を乗せたまま、腰を伸ばす。その足が一段目の友の肩に食い込む。自分たちが腰をしっかり伸ばしきらなければ、上に乗った人たちがバランスを崩して落下することになる。歯を食いしばって立ち上がる。
続いて、三段目が、四段目が次々と立った。皆、体が小刻みに震えている。
頭上を撮影用のヘリコプターが飛ぶ。
バババババババー……。
ヘリの起こす風が予想以上に激しい。円塔が揺れる。周囲のメンバーは、心で題目を唱える。やがて、ヘリは遠のいていった。
五段目が立った。音楽隊の奏でるドラムの音が響く。六段目となる最後の一人が立とうとした。が、腰をかがめた。足下の青年の肩に手をかけ、もう一度、体勢を整える。観客も息をのみ、いっせいに円塔の頂上を見る。
“立て! 俺たちを信じて立て!”
彼を支える青年たちが、心で叫ぶ。
「頑張れ!」
観客席から声が起こる。
青年は深呼吸し、空を見上げた。
そして、一気に立った。
最上段に立った青年は、両手を広げた。
大歓声と大拍手が、長居陸上競技場の天空に舞った。スタンドには、「関西魂」の人文字が鮮やかに浮かび上がる。
山本伸一も、大きな拍手を送った。
円塔のてっぺんで、青年が何かを叫んだ。
「弘治、やったぞ!」
大歓声にかき消され、聴き取ることはできないが、魂の絶叫であった。青年は菊田弘幸といい、弘治とは、五日前に他界した親友で男子部員の上野弘治のことである。二人は、同じ水道工事の会社で働いており、上野も、この青年平和文化祭に組み体操のメンバーとして出演する予定であった。しかし、三月十七日、彼は病のために他界した。親友の思いを背負っての菊田の挑戦であった。
青年たちが打ち立てた六段円塔は、永遠に崩れぬ、美しき友情の金字塔でもあった。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
創価学会が大好き