名字の言

〈名字の言〉 2018年8月30日  「どんな噺でも、対話をするのが落語」と語ったのは「笑点」などで活躍した桂歌丸さん。

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「どんな噺でも、対話をするのが落語」と語ったのは「笑点」などで活躍した桂歌丸さん。「真景累ケ淵・お熊の懺悔」など多くの古典落語をよみがえらせた▼といっても、古い文献通りに演じると、現代の人々に通じない部分が出てくるので工夫は欠かせない。歌丸さんの演じた「いが栗」には、サゲ(オチ)が2通りあったそうだ。その日の客層や会場の雰囲気によっても、臨機応変に筋を変えたという▼「今日の客はやりにくいなって、いうようなお客が来てなきゃダメなんだ」「そういうお客を、こっちへ引っ張りこむようでなけりゃ」と歌丸さん。噺の中だけでなく、客席とも“対話”しながら作品を仕上げていった(『歌丸 極上人生』祥伝社黄金文庫)▼相手の立場に立ってこそ、対話は実りあるものとなる。まず話を聞き、気持ちに寄り添い、何ができるか共に考え始める。自分の心を働かせれば、相手の気持ちも動きだす。この自他共の心の成長こそ、対話のもたらす果実にほかならない▼法華経では「難問答に巧みにして 其の心に畏るる所無く」と地涌の菩薩をたたえる。人の悩みは千差万別。だが、その一つ一つと真剣に向き合う対話が、自他共の成長を促す。わが地域に、心躍る友好の語らいを大きく広げよう。(誼)