群馬・高崎市の「上野三碑」は日本最古級の石碑として名高い。昨年、ユネスコの世界記憶遺産に登録され、知った人も多いだろう▼三碑の一つ「金井沢碑」には、「誓願」の二字が刻まれる。奈良時代初期、「三家」を名乗る氏族が仏教を信奉し、一族繁栄を祈るために造立したものだ。当時の仏教の普及を知る上で重要な史料だという▼同じ「祈り」でも、いわゆる神頼みのような“おすがり”と、「誓願」の祈りは異なる。おすがりとは、ひたすら神仏など他者の行動に頼ること。一方、誓願の祈りは、自身の行動の出発点である。そして、仏教が促す祈りとは、この「誓願」にほかならない▼仏典に説かれる勝鬘夫人という女性は、仏の境涯を目指し、釈尊に誓いを立てる。「私は、孤独な人、不当に拘禁され自由を奪われている人、病気に悩む人、災難に苦しむ人、貧困の人を見たならば、決して見捨てません。必ず、その人々を安穏にし、豊かにしていきます」と▼この言を引きつつ、池田先生は“この気高き誓願こそ学会精神”と訴えた。あの人の顔、この人の名前を具体的に思い浮かべ、幸福を祈る。祈ったら、そうなるために動く。動いたら、また祈る。この往復作業の中に、広宣流布があり、自他共の人間革命がある。(之)