「澄む時はあくまで澄んで秋の空」(正岡子規)▼秋空の澄んだ美しさは格別だが、一方で、秋雨前線が本州に停滞し、天気が不安定になりやすい時季でもある。人の心の移ろいやすさに例え、「秋の空は七度半変わる」とのことわざもある▼仏典では人の心について、一日の中で「八億四千念」(御書471ページ)という膨大な数の“思い”を起こすと説かれる。それだけ変わりやすい心を持った人間同士なのだから、誤解やすれ違いが起きるのも無理からぬことだろう▼地域や家庭の人間関係に悩んでいた婦人が“入会を決めた”御書の一節がある。それは「心の師とは・なるとも心を師とせざれ」(1088ページ)。婦人は自らの感情に振り回され、人と衝突してばかりいた。だが「信心を始めてから、『自分がみんなを照らす太陽に』との生き方に変わった」。周囲からも“笑顔が増えた”と言われるように▼秋の天気のように変わりやすい人の心や、思い通りにならない境遇にとらわれるより、“わが心の支配者は我なり”と決めて、自分の心を磨きたい。日々の勤行・唱題や学会活動こそ、わが胸中に太陽を昇らせる営みである。「見あぐれば塔の高さよ秋の空」(子規)。澄み渡る境涯の高みを目指し、前進する人の心は美しい。(之)