〈名字の言〉 2017年2月10日
駅のホームで手伝いを必要とする人がいる。「何かお困りですか?」と声を掛けようか躊躇するうちに機を逸してしまった。こんな経験はないだろうか▼善行をなすときには勇気が必要だが、こうした場合は勇気のあるなしよりも、むしろ“習慣になっているかどうか”で行動が違ってくるだろう。ある文化人は、困っている人に自然に手を差し伸べることが「自分の人生の一部になる必要がある」と指摘する▼アメリカでは10代からホームレスへの炊き出しなどを重ねることで、ボランティア精神を身に付けるという地域がある。やり方はさまざまあるにしても、自分の小さな世界にとどまることなく、同じ「人間として」行動する日頃からの訓練や教育が重要といえる▼海外の企業から日本の企業のトップに就いた人が、「愕然としたことがある」と言っていた。一つは、日本社会に「社会貢献の文化が乏しい」こと、もう一つは「女性の登用など多様性が乏しい」こと。ただ前者は、東日本大震災を契機に「急速に根付いてきた」とも▼仏法は「同苦」の姿勢――自分の心の中に他者を置き、相手を理解する努力と行動を教える。震災から間もなく6年。被災地の「苦しむ心」を置き去りにせず、同苦し続ける自分でありたいと思う。(側)