ゴルフの渋野日向子選手が国内ツアーで復活の逆転優勝を果たした。海外初参戦でメジャー制覇を遂げた2019年以来、約2年ぶりの勝利に涙する姿は、その間の苦悩を物語っていた▼渋野選手の強さの一つは「バウンスバック」。“跳ね返り”を意味し、ボギー以上の悪いスコアを出した次のホールで、バーディー以上の成績をマークすること。2年前、彼女は国内トップのバウンスバック率で勝利を積み上げ、精神力の強さを示した▼大きな期待を背に迎えた昨年は、力を発揮できず苦しい一年に。悩んだ末に着手したのがスイングの改造だった。五輪代表を逃し、冷評も浴びたが、“過去の自分を超える”と逆境を跳ね返し、再び頂点に立った▼スポーツジャーナリストの二宮清純氏は「成功体験は未来の失敗体験」と語る。「一つの成功に酔いすぎると、その後の変化が見えなくなり、進歩が止まる」(『対論・勝利学』第三文明社)と。スポーツに限らず、人間の成長を阻む難敵は“自分はこれでやってきた”という、成功した過去への執着心だろう▼変化を恐れず、変化の中に飛び込み、新しい自分をつくる。昨日より今日、今日より明日へと進みゆく「挑戦の人」「向上の人」に勝利の栄冠は輝く。(壹)