学生時代の先輩や同級生らと再会する機会があった。懐かしい顔を見れば、当時の出来事が胸によみがえり、話は尽きない。笑いあり、感動あり、涙あり。その中で、ある女性の講義での思い出が印象に残った▼それは時事問題をテーマに、教授が学生全員に意見を求めた講義。彼女は、自分一人だけが皆と違うことに気付き、つい多数の意見に同調してしまう。だが講義を通し、実は教授の見解が自分のものと同じだったことが分かり、臆病さを猛省する。以来、自らの意見が求められる場面では、場の空気ではなく、自身の経験と信念に照らして発言することを心掛けてきた▼社会人となり、ある顧客から「私にノーを言うのは君だけだ。だから君に頼むんだ」と言われた時、彼女はあの日の講義を思い出したという。これからも心の中で亡き恩師に勝利を報告し続けたいと、彼女は誓っていた▼人生には“大切な何か”を教え、気付かせてくれる存在がいる。教員、友人、両親、師匠――人は誰しも、そうした多くの出会いや励ましを支えにして、今ここに立っている▼「自分を育んでくれた人々を断じて裏切るまいと思えば、人生の正しき軌道から外れることはない」と池田先生。現在も未来も、栄光への道は「感謝」から始まる。(仁)