『広辞苑』を開いた折、ふと「道」の字が目に留まり、説明文に驚いた。「道の意の『ち』に接頭辞『み』がついて出来た語」とある▼例えば「家路」は「家」と「ち」が合わさり、読み方が濁ったものだという。一方の「み」は「御心」のように敬意を表している。いにしえの日本人は“ち”を、「人」や「食」を運び、「命」をつなぐための大切なものと考え、その“ち”を開いた先人に感謝して「みち」と称したのだろうか▼日本画の巨匠・東山魁夷氏の代表作「道」は、青森の種差海岸をモデルにしている。氏は遠くにある丘の上の空を少し明るく描き、ゆるやかに上る道が右上がりに画面の外へ消えていくように描いた。すると、「これから歩もうとする道という感じ」が強くなったと述懐していた(『私の風景』求龍堂)▼192カ国・地域に連なる「世界広布の道」の壮大さを思う。師が開き、各地の同志が身を粉にして戦い広げてきた道である。感謝と尊敬の念を抱かずにはいられない。そして私たちは今、学会創立90周年、さらに100周年へと続く道の新たな起点に立っている▼広辞苑の「道」の後には「未知」という字があった。我らの歩みのその先で、まだ見ぬ未来の友が待っている。さあ勇気の一歩を踏み出そう。(之)