社説

〈社説〉 マンデラ氏生誕から100年 2018年7月22日 対話の力で差別なき世界を目指す

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対話の力で差別なき世界を目指す

 今月18日、南アフリカ共和国元大統領のネルソン・マンデラ氏(1918年~2013年)の生誕から、100周年を迎えた。世界各地で、氏の功績をたたえるイベントが行われた。
マンデラ氏はかつて、同国のアパルトヘイト(人種隔離)政策にピリオドを打つため、反体制運動の先頭に立った。だが当局は氏を幾度となく逮捕。1964年に終身刑の判決を受けた氏は、先の見えない獄中生活を余儀なくされた。それでも、“人種隔離の思想は断じて捨て去るべき”との信念を失うことなく、正義の声を上げ続けた。
90年、国際社会の非難が高まる中、デクラーク大統領(当時)が、マンデラ氏の釈放を決定。同年2月11日、氏は約27年半、1万日に及ぶ獄中闘争を勝ち越え、出獄する。
その年の10月、来日した氏は池田先生と初の出会いを結んだ。席上、先生は長編詩「人道の旗 正義の道」を贈り、迫害に打ち勝った氏を「人道主義の王者」とたたえた。氏は大統領に就任後、95年にも東京で先生と会見。両者の友情は年を経るごとに深まっていった。
人種隔離撤廃後、氏が目指した国家体制――それは抑圧者を追い出すものでも、アフリカ系住民だけを優遇するものでもなかった。氏はかつて、次のように語っている。「私たちは、人々が肌の色を基にして考えるのをやめる社会を達成するために闘っているのです」(『ネルソン・マンデラ 私自身との対話』長田雅子訳、明石書店)
この言葉が象徴するように、同国では現在、アフリカ系諸言語だけでなく、アパルトヘイトを主導した、いわゆる白人の言葉であるアフリカーンス語を含め、11言語が公用語となっている。そこには、“人間に上下はない。皆が尊き存在”との理念が表されている。市民一人一人が、この思想を共有し、わが誓いとしていくことが、真に差別なき世界を築く力となろう。
「万人に仏性がある」との仏法哲理を根幹とした、創価の草の根の対話運動の意義は大きい。
かつて池田先生は、「仏法の人間主義に国境はない。いずこであれ、一人と心を通わせ、誠実に対話することから出発する」とつづった。マンデラ氏もまた、「最も強力な武器は、暴力ではなく、人々との対話である」と述べている。
国籍、肌の色、性別――あらゆる差異を超え、私たちは、「人間」という大地に根差した生命尊厳と万人平等の哲学を、今いる場所から語り広げたい。