社説

〈社説〉 夏休み明け 2018年8月26日 未来の宝に心の「安全地帯」を  “子どもの頃、学校に行くのが嫌でたまらず、新学期が始まる朝がつらかった”とは、20世紀を代表する歴史家トインビー博士の回想だ。

未来の宝に心の「安全地帯」を

 “子どもの頃、学校に行くのが嫌でたまらず、新学期が始まる朝がつらかった”とは、20世紀を代表する歴史家トインビー博士の回想だ。100年以上も前の話とも思えぬ感覚を覚える。
夏休みが終わり、さあ新学期――久しぶりの学校生活が楽しみな子どもがいる一方、それが苦痛で登校できないという子どももいる。親でも見えにくい心の揺れがある。調査によれば、18歳以下の自殺者数は、8月下旬から9月1日のこの時期が多いという。痛ましい現実だ。
昨年の8月下旬には、上野動物園がツイッターの公式アカウントで「学校に行きたくないと思い悩んでいるみなさんへ」と呼び掛けた投稿が反響を呼んだ。「アメリカバクは敵から逃げる時は、一目散に水の中へ飛び込みます/逃げる時に誰かの許可はいりません。脇目も振らず逃げて下さい」。そして「もし逃げ場所がなければ、動物園にいらっしゃい」と。
生活の変化が特に大きい夏休み明け前後の時期、子どもには心の「避難場所」「安全地帯」が必要だ。それには、子どもが悩みを打ち明けやすい環境づくりがカギとなろう。文科省の「24時間子供SOSダイヤル」(0120―0―78310)など、相談窓口の拡充も望まれる。


病児保育などに取り組むNPO「フローレンス」代表理事の駒崎弘樹氏は、夏休み明けの子どもとの関わり方について「親御さんであれば、家庭の中で子どもの話をよく聞いてあげてほしい」と強調。その際、“ちゃんとした親”として聞くよりも、例えば「お父さんも仕事で嫌な人がいてさ」など、親自身が等身大の姿を開示することで、子どもも学校での悩みを話しやすくなるのではないか、とアドバイス。さらに「教師と生徒、親と子どものタテの関係だけでなく、別の大人が関わるナナメの関係も大切」と指摘する。
『希望対話』の一節が思い浮かぶ。池田先生は、いじめに悩む子どもたちに「創価学会のお兄さん、お姉さん、おじさん、おばさんも、みんな味方だよ!」と呼び掛けた上で「君が自分で自分を、だめだと思っても、私はそうは思わない。あなたが自分で自分を見捨ててしまっても、私は見捨てない」と万感のエールを送った。
何があっても味方として、そばに寄り添い続けてくれる。こうした大人の存在こそ、子どもにとって何よりの「安全地帯」だ。一人の成長を真心込めて祈りつつ、家庭で、地域で、未来の宝を温かく包み、育みたい。