社説

〈社説〉 東京五輪まで2年 2018年7月23日 平和社会の構築へ機運醸成を

スポンサーリンク
平和社会の構築へ機運醸成を

 4年に1度のサッカーW杯・ロシア大会は、フランスが世界一の栄冠をつかみ、約1カ月に及ぶ熱戦に幕を下ろした。各国の代表選手が勝利への執念を燃やして戦う姿に、大きな勇気と感動をもらった人も多いだろう。改めてスポーツの持つ力を実感する機会となった。
2年後の2020年7月24日、東京五輪が開幕する。オリンピック憲章には「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることである」との根本原則が定められている。
16年リオ大会では史上初の難民選手団が結成、今年の平昌冬季大会では、韓国と北朝鮮の南北合同チームが結成された。“五輪と政治”を巡っては困難も多いが、近年の動きには新たな変化が読み取れる。「スポーツには、世界と未来を変える力がある」とのビジョンを掲げた東京大会の開催もまた、人類が希求する恒久平和実現への一歩となることを期待したい。
東京大会の組織委員会は、大会を一過性のものではなく、「できるだけ多くの人が参画し、あらゆる分野で東京大会をきっかけに社会が変わったと言われるような大会に」とのプランを掲げ、東京だけでなくオールジャパンでの機運醸成と、未来へのレガシー(遺産)創出に向けての取り組みを進めている。
その中の一つである「東京2020参画プログラム」では、大会ビジョンの下、「みんなに優しい街づくり」や「持続可能な社会の実現」など八つのテーマを掲げ、参加者自らが体験、行動できる多様なイベントが各地で開催されている。
また、47都道府県を巡る聖火リレーでは、大会が「復興五輪」と位置付けられていることから、東京電力福島第一原発事故など震災で甚大な被害を受けた福島県が出発地に選ばれた。
リレーのコンセプトは「希望の道を、つなごう」。組織委員会は「困難を乗り越える力や不屈の精神を全国に受け継いでいく聖火リレーにしたい」と説明している。平和の象徴とされる聖火が、災害の被災者をはじめ多くの人々の未来を照らす“希望の光”になることを念願してやまない。
世界を見渡せば、貧困や紛争、核兵器の拡散など人類が直面する課題が山積する。しかし、平和を築くのも一人一人の人間である。2年後の活躍を夢見て日々鍛錬を積むアスリートと同様、五輪が目指す平和社会の構築に向けて歩みを進めたい。