社説

〈社説〉 きょう、初訪中から44年 2018年5月30日 人間の交流で日中友好の新時代を

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 「積水極むべからず 安くんぞ知らん滄海の東」とは、唐代の詩人・王維が帰国の途に就く阿倍仲麻呂に詠んだ惜別の詩である。“深くたたえた海水は、どれほどの深さにまで達するものか分からない。ましてやその青海原のはるか東の国を知ることができようか”と。
 日本が海に隔てられた遠国だった8世紀から1200年以上が過ぎ、昨年、訪日した中国の旅行客は700万人を超えた。今月には、李克強首相が就任後初の来日。「両国は風雨を経て曲がり道をたどったが、風雲は過ぎ去り晴れ空となった」と語るなど、日中関係は新たな段階に入っている。
 きょう5月30日は池田先生が中国に第一歩をしるした日である。1974年のこの日、先生は当時イギリス領だった香港から列車で境界の駅まで行き、鉄橋を歩いて中国側の深圳に入った。
 この折、先生は広州、北京、西安、鄭州、上海、杭州の各都市へ。国家指導者らと語らいを重ねるとともに、教育機関や工場など民衆の生活の現場に足を運び、行く先々で友情を結んでいった。それは「真実の人間と人間との友好によって、揺るぎなき平和の基盤を、さらに、堅固に」との信条からであった。
 一人の人間と人間が結ぶ友情こそ、「風雨」であれ、「晴れ空」であれ、揺るがぬ友好の礎となる。昨年10月から11月にかけて日中両国で行われた意識調査によれば、相手国に対する印象を「良くない」と答えた人の割合は、一昨年比で両国とも減少した。また「良い印象」と回答した人は、その理由として、日本側は「観光客増で身近になった」、中国側は「礼儀とマナーが良い」点を挙げる人が最も多かったという。この事実は、人間同士の触れ合いが増すことが、印象の好転を後押ししていることを示していよう。
 池田先生は50年前の日中国交正常化提言(68年)で訴えた。
 「およそ国交の正常化とは、相互の国民同士が互いに理解しあい交流しあって相互の利益を増進し、ひいては世界平和の推進に貢献することができて、初めて意義をもつ」
 互いを知る時代から、世界平和のために協働する時代へ――平和友好条約締結から“不惑”の40年を刻む今、日中関係も新たな飛翔の時を迎える。
 本年は、学会として多彩な交流の行事を予定している。日中友誼の先人たちの思いを胸に、友情と平和の基礎を築く人間交流を広げていきたい。