名字の言

〈名字の言〉 2018年7月15日  岡山市北区の農家から連絡があった。今回の豪雨で自宅は床上浸水。農地は水没。「先は見えませんが、地域の方や全国の知人が励ましの声を掛けてくれて……」。

スポンサーリンク

岡山市北区の農家から連絡があった。今回の豪雨で自宅は床上浸水。農地は水没。「先は見えませんが、地域の方や全国の知人が励ましの声を掛けてくれて……」。現在は避難先から自宅に戻り、片付けを進める▼愛媛県宇和島市では当初、交通網が寸断されて物流がストップし、スーパーの棚から食品が消えた。「お店を3軒、回ったが、何も手に入らなかった」と高齢者。大きな災害が発生すると、社会の弱い部分にしわ寄せがいく。その「現実」がたまらない▼被災された方にとって一番のショックは「忘れられること」。被災地に「苦しむ心」が置き去りにされることである。被災地だけではない。苦しむ心や悩む心は、私たちの周囲にたくさんある。それを周りが理解しようとしないことが、苦しんでいる人の孤独感を強める▼仏法は「同苦」――相手に思いをはせる努力を忘れないことを教える。目の前の一人に同苦し、「絶対に負けない心」を引き出していく生命の触発作業こそ、私たちの励ましの運動にほかならない▼人生の逆境を乗り越えた友が、心から共感したという言葉を教えてくれた。「夜の闇のなかに星が見えるように、苦悩のなかにこそ人生の意味が見えるものである」(北御門二郎訳)。思想家ソローの箴言である。(川)