名字の言

〈名字の言〉 2022年6月12日 絵本・童話作家の佐野洋子さんはある時期、一風変わった時計を愛用していた

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絵本・童話作家の佐野洋子さんはある時期、一風変わった時計を愛用していた。友人のメキシコ土産で、文字盤に短針1本しかないというものだった▼後に、それはあるべき長針が外れ落ちた、壊れた時計だと知る。それでも“分刻み”の長針がないぶん、時間に追われず、おおらかに時が流れていくように感じ、とても気に入っていたという(『私の猫たち許してほしい』ちくま文庫)▼小説『新・人間革命』に、山本伸一が聖教新聞の本社屋上で何人かの職員と語らう場面がある。視線のかなたには富士の雄姿が光り、眼下には家々の屋根が見える。伸一は言う。「家並みは路地裏から見てもわからないが、高いところから見ると、一目瞭然だろう。こうして上から見下ろしていくような、境涯を確立していく道が仏法なんだよ」と▼これは、足元や目の前の小事を軽んじていいという意味ではない。本意は、信心の眼を開き、自身の境涯を高めれば、揺れ動く社会の荒波に翻弄されず、悠然と進んでいけるということである▼刹那に生きる人は大事を成せない。物事を大局から捉え、目的を正しく定めてこそ、達成への課題も明確になる。それが着実な一歩前進の因ともなり、人生勝利への起点ともなる。(白)