名字の言

〈名字の言〉 2018年8月17日  少女はセミの羽化を初めて見た。地中からはい出てきた幼虫が木に登り、殻を破るまで約2時間。

少女はセミの羽化を初めて見た。地中からはい出てきた幼虫が木に登り、殻を破るまで約2時間。母と一緒に観察した▼羽化直後の羽は透けるように白く、うっすらと色づいたエメラルドグリーンが神秘的だ。「妖精みたい」と、少女が目を見開く。だがこの美しい姿を世に現し、夏空へ羽ばたくまで、どれほどの戦いが必要だったか。羽化に適当な木が見つからないこともある。風にあおられ枝から落ちたり、天敵に襲われたりして半数以上が力尽きてしまうという▼成虫となったセミの鳴き声を「この世界にうまれたうれしさと、自分がこうして生きていることのたのしさを表すために、うたっている」と表現したのは昆虫学者ファーブルである(奥本大三郎訳)。土の中で何年も過ごし、ついに殻を破った喜びの歌だと思うと、あの“騒がしさ”も心地よい▼人間にも「殻」がある。“自分はこんなものだ”と決め付け、卑下する心がその一つ。だが生命には“成長しよう”“殻を破ろう”という本然のリズムが備わっていると、池田先生は訴える▼殻を破るとは決して“別の人間”になることではない。自身の可能性を信じ、秘められた力を発揮しようと挑戦を続けることだ。焦らず、しかしたゆまず。そこに人として生まれた本当の喜びもある。(之)

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