社説

〈社説〉 きょう、終戦の日 2018年8月15日 生命尊厳の哲理を伝え広げる

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生命尊厳の哲理を伝え広げる

 今年は、全ての日付と曜日が1945年と同じになる。73年前の水曜日のきょう、人々はどのような思いで終戦を受け止めたのだろうか。戦没者へ追善の祈りをささげるとともに、平和について考えを深め、新たな一歩を刻む日にしていきたい。
昨年、被爆者から直接、体験を聞いた。その方の声をまとめた記事を事前に読んでお会いしたが、心に残った印象の大きさは比べものにならなかった。
言葉をかみ締めながら記憶を紡ぎ出すように話す姿は、まるで原爆投下を昨日の出来事のように感じさせ、身近で大切な人が大勢亡くなった心の痛みが、伝わってきた。
今、戦争を経験した世代の高齢化に伴い伝承の機会が少なくなっている。心に平和への願いを強く根付かせる、こうした貴重な“生の声”に、これからを生きる若い世代が触れることを強く願うばかりだ。
さらに、平和についての研さんも大事だ。昨年、創価学会の中国・九州方面の学生部が行った平和意識調査では、約7割の人が“平和のために行動したいができていない”と回答した。
平和教育は「戦争体験の伝承」のみならず、平和の具体的な像を描き、そのために何ができるかを考えることにも取り組む必要があるといえる。
仏法では、「合戦は瞋恚よりをこる」(御書1064ページ)と、戦争の原因は、いかり、うらむ生命にあると説く。これは貪・瞋・癡という生命の「三毒」の一つ。末法の時代は生命の濁りが盛んとなり、平和を阻む。
三毒に侵された衆生からの迫害に耐え、法華経を弘めた不軽菩薩のように、相手の仏性を信じて尊び、その可能性を引き出す行動こそが平和への確かな道筋といえよう。
「平和とは、単に戦争のない状態をいうのではない」と、池田先生は小説『新・人間革命』につづっている。そして「地球上のあらゆる人々が、核の脅威や飢餓、貧困、差別など、人間を脅かすあらゆる恐怖や不安から解放され、生きる喜びと幸せを実感できてこそ、真の平和である」と。平和は身近な場所から生まれる。そのために私たちが行えることは、たくさんあるはずだ。
「平和ほど、尊きものはない。平和ほど、幸福なものはない。平和こそ、人類の進むべき、根本の第一歩であらねばならない」――同書の冒頭に書かれている師の思いを胸に、生命尊厳という平和の哲理を目の前の一人一人に伝え広げていこう。