厳しい寒さが続く。通勤駅などの「立ち食いそば」は、庶民の強い味方だ。最近では、女性が入りやすいよう店内を改装したり、健康志向に合わせて、つゆの味付けを工夫したりしている▼「トルネードポテトそば」「まるごとトマトそば」……数々の斬新なメニューで売り上げを伸ばすある大手の立ち食いそばチェーン店。新メニューを開発するのは“商品企画の部署”ではなく、店長はじめ現場のスタッフだという▼若者の街では、肉がたっぷり入ったメニューが人気。お年寄りの集まる街では、サッパリ系が好まれる。同社の創業者は述べている。「日ごろお客様に接していて、その需要を目の前で感じているのは現場の従業員」「『こういうメニューがあれば売れるのに』という発想が生まれてくるのは自然なこと」(丹道夫『「富士そば」は、なぜアルバイトにボーナスを出すのか』集英社新書)▼「知恵は現場にあり」といわれる。だが、その知恵は、現場の課題と真剣に向き合い、乗り越えようとする人の強い責任感から生まれるものだ▼“誰かがやってくれる”と思えば、知恵など湧いてこないだろう。自分自身が“職場の第一人者に”“地域の幸福責任者に”との自覚に立って挑戦を始めた時、価値創造の未来は開ける。