名字の言

〈名字の言〉2022年7月15日  日蓮大聖人のもとに、富木常忍が母を亡くした報告に訪れた。常忍の夫人がずっと献身的に介護してくれたという。

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〈名字の言〉2022年7月15日
日蓮大聖人のもとに、富木常忍が母を亡くした報告に訪れた。常忍の夫人がずっと献身的に介護してくれたという。それを聞かれた大聖人は、すぐさま夫人宛てに筆を執られた。「ご主人が『母の臨終が安らかだったことと、あなたが手厚く看病してくれた真心は、いつまでも忘れられない』と喜んでおられましたよ」(新1316・全975、趣意)▼常忍は鎌倉幕府の御家人に仕える武士。妻への日頃の感謝を素直に示せずにいた。そんな夫の心の内を伝えてもらった夫人は、どれほどうれしかったか。夫妻のために心を砕かれた大聖人のご配慮のこまやかさに感動する▼大聖人が門下にしたためたお手紙を拝すると、一人一人が悩みや試練を乗り越えゆくよう、人生相談や生活指導があり、時には弱気を打ち破る激励も。現実に即した具体的なご指南が多い▼仏教学者の中村元博士は言う。「『法華経』が特殊な哲学を述べていないという点に、かえってこの経典の重大な哲学的立場を読み取ることができる」(『インド思想の諸問題』春秋社)▼仏法は、人間を離れ、実生活を離れた理論などではない。現実に生きる「一人」に寄り添い、「一人」の幸福のために祈り尽くす振る舞いこそ、仏法の真髄である。(訫)