名字の言

〈名字の言〉 2018年6月5日  ピアニストの小山実稚恵さんが、本紙の文化欄で語っていた。同

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 ピアニストの小山実稚恵さんが、本紙の文化欄で語っていた。同じ楽譜で同じ楽器を奏でても、人によって音に違いが出る。もちろん技術の差もあるが、大切なのは「意思を込められるかどうか」「むしろ、その一点で全てが決まる」と▼長崎県大村市のある婦人は、白血病を克服した体験を持っていた。だが、口べたを気にして、人前で語ったことがなかった。それが昨年、先輩に励まされ、意を決して体験発表。緊張し、口ごもりながらも、懸命に語るその言葉には、信仰への確信と感謝の響きがあった。多くの友が涙し、喜んでくれた▼“頑張って語れば、私でも人を元気づけられる”。自信を付けた婦人は見違えるほど明るくなった。その姿に触れ、未入会だった夫、長女、孫が次々と入会した。今、彼女は語る。「何十倍、何百倍、しゃべっていきます!」▼文豪ゲーテいわく「君の胸から出たものでなければ、人の胸を胸にひきつけることは決してできない」(高橋健二編訳)。いかに立派な話でも、借り物や背伸びの言葉では、人の胸に響かない。大事なのは、自分の思いを、自分の表現で、誠実に伝えることだ▼心を動かすのは、やはり心。精いっぱいの祈りと真心を込めて語ろう。そうすれば、対話の力は何倍にも増す。(誠)