“星空が美しく見える村”として全国的に知られる長野県南部の阿智村を訪れた。高原に立ち、満天の星を仰いでいると、まるで自分が宇宙空間に浮かんでいるような感覚を覚えた▼信州・木曽に生まれた島崎藤村は、星を題材にした情景を数多く描いている。「山の上の星は君に見せたいと思ふものの一つだ」という散文。星空を「望みをさそふ天の花」と例える詩。星との語らいが文豪を励まし、創作への活力を与えていたことがうかがえる▼「わたしと宇宙展」が各地で好評を博している。親友の未来部員に誘われ、同展を観賞した女子中学生が語っていた。「“私も、この広い宇宙の一部なんだ”と思えた瞬間、今、抱えている人間関係の悩みも、必ず乗り越えられると感じました」。自身の存在の貴さをかみしめた彼女は、不登校を乗り越え、進学への挑戦を開始している▼池田先生は、「星と対話する時、人は本来の自分自身に立ち戻ることができます。悩みや困難の多い日常のなかでこそ、星空を見上げ、宇宙大の生命の鼓動を全身に感じながら、明日への希望を湧き上がらせていきたい」と▼弥生3月。厳寒の冬から芽吹きの春への移ろいも、宇宙の運行の証しである。大宇宙のロマンに思いをはせつつ、心の扉を開く対話に走りたい。(市)