昭和の大女優・高峰秀子さんが養女を迎えたのは、80代半ばの時だった。「かあちゃんは、自分が年をとったと思ったのは、いつ?」と娘から尋ねられ、「今日できることを明日に延ばした時」と、即答したという▼「それは何歳の時?」との質問には「74歳」と。料理や読書に励み、規則正しい生活をおろそかにしない。より良い人生について、生涯、問い続けた。そんな母・高峰さんには「己を律する心が、微動だにせず存在し続けていた」と、娘は振り返っている(『類型的なものは好きじゃないんですよ』河出書房新社)▼中国のことわざに「身体の老いは恐れないが、心の老いが恐ろしい」と。心の老いとは、意欲や気力を失うことともいえよう。社会や生活状況の変化に直面した時こそ、“自分はこう生きる”という哲学があるか否かが問われてくる▼池田先生と親交を結んだ高峰さんは、学会の集いにも参加したことがある。先生は高峰さんを前に語った。「人間はこの地球上に楽しむために生まれてきました。『衆生所遊楽』の人生こそ、真実の人生です」▼遊楽とは、うわべの楽しみではない。豊かな生命力と知恵で逆境も成長の舞台に変え、生涯青年の心で“今できること”に挑戦していく。それが真の「遊楽」の生き方である。(之)