名字の言

〈名字の言〉 2018年11月8日  “人を取材するのが仕事”と語る、ノンフィクション作家の梯久美子さん。

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“人を取材するのが仕事”と語る、ノンフィクション作家の梯久美子さん。多くの出会いの中で最も心に残る一人に、クイズ番組の司会者などでも活躍した、俳優の児玉清さんを挙げた▼梯さんの著作の刊行を記念する対談でのこと。児玉さんは付箋だらけのゲラ刷りを持って現れた。そして、どこに心を打たれ、何を考えたのかを一つ一つ語っていく。梯さんの話にも熱心に耳を傾けながら▼その姿に「感謝を通り越して圧倒されてしまった」と梯さん。印象的だったのは、多忙なはずの児玉さんが醸し出す“あなたのための時間はいくらでもありますよ”という雰囲気だ。その訳を「目の前にいる相手に、そのときの自分のすべてを惜しみなく差し出しているからだと思う」と振り返る(『好きになった人』ちくま文庫)▼人と会っていても、時間や他のことが気になってしまうことがある。そうした気持ちは相手に伝わるもの。時間に限りがあるからこそ“目の前の一人”に全精魂を注ぎたい▼インドのガンジーは言った。「何千という人々すべてを見まわすことは、必要じゃない。あるとき、一人の命に触れ、その命を救うことができれば、それこそ私たちが作り出せる大きな変化なんだ」(塩田純『ガンディーを継いで』日本放送出版協会)(誼)