インドの詩人タゴール、ドイツの文豪ヘルマン・ヘッセ、そして日本の劇作家の倉田百三――彼らには一つの共通点がある。フランスの文豪ロマン・ロランとの文通だ。ロランが生涯でつづった手紙の総数は1万通を超えるという。1日に1通書いたとしても30年近くを要する膨大な数だ▼ロランは21歳の時、人生に悩み、ロシアのトルストイに手紙を送った。それに対しトルストイは、長文の返事をしたためた。世界的な名声を博する文豪が、無名の一青年に寄せた誠実さにロランは感動し、自らも文豪の行動に倣ったのである(『ロマン・ロラン全集35』みすず書房)▼一つの種が育てば、それがまた、いくつもの種を生む。トルストイがロランに送った励ましがロランを育て、ロランがまた、多くの人に勇気を届けた。一人への「励まし」は、文字通り「万の力」となる▼池田先生がこれまで、同志一人一人に贈った激励の和歌や揮毫は数限りない。今も小説『新・人間革命』の連載を通して、私たちに希望を送り続けている。この師の励ましの連続によって、今日の学会の世界的発展は築かれてきた▼法華経の寿量品に「未曽暫癈(未だ曽て暫くも癈せず)」と。広宣流布とは、たゆみなく励ましの種、触発の種をまき続ける挑戦である。(嶺)