山形県へ車で行った折、県中央部にそびえる月山(標高1984メートル)を越えた。往路と復路の印象が全く違った。内陸から日本海側に向かう際は、斜面がなだらかで“慈母”のよう。一方、帰路に見た月山は気高い“厳父”のようだった▼「山は人物の育成所となる」と、牧口先生は『人生地理学』につづった。山はその姿を通し、見る人の心に語り掛けてくる。それを受け止める私たちは、時に励まされ、時に鍛えられる。困難の頂として立ちはだかり、試すこともある▼かつて、ある婦人の句が本紙「新・生き生き川柳」に載った。「人のため 尽くせる喜び 無限大」――句の通り、彼女は本紙の通信員として、同志の活躍を書き続けてきた。しかし掲載から程なく、大病に倒れた▼だが彼女は試練の山を前に“再び、カメラとペンで広布のお役に立つ!”と決意。不屈の一歩一歩で、病魔を打ち破った。それから間もなく、彼女が撮影した山の写真が紙面を飾った▼池田先生は語る。「自分で、挑戦すべき『山』をつくり、『山』を乗り越え、また次の『山』をつくって乗り越えていく。乗り越えるたびに、もっと強く、もっと大きな自分へと人間革命していく」。山は、自身の中に、あえてつくるものでもある。気高い自身を築くために。(白)