名字の言

〈名字の言〉 2018年5月26日  歌舞伎俳優の十八代目中村勘三郎さんは、暇さえあれば、いつでもぶつぶつ、ぼそぼそと口ずさむように台詞を覚えていたという。

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 歌舞伎俳優の十八代目中村勘三郎さんは、暇さえあれば、いつでもぶつぶつ、ぼそぼそと口ずさむように台詞を覚えていたという。その動作を自ら“台詞を食う”と表現した▼そんな勘三郎さんは、芝居の舞台になっている場所をしばしば訪れていた。「情景をいつでも目に浮かぶようにしておけば台詞にもリアリティが出てくる」「家で覚えているよりも、実感として、湧く」と(『勘九郎とはずがたり』集英社文庫)。たゆまぬ鍛錬と工夫の積み重ねによって、観衆の心を動かす迫真の演技が生まれた▼私たちの活動の基本は、真心こもる励ましを目の前の友に送ること。そのためには、自ら友のもとへ足を運び、よく話を聞き、その状況を知る努力が欠かせない▼家庭や仕事の状況が分かれば、その心にしっかりと寄り添うことができる。生活の悩みや課題を知れば、具体的な助言もできるだろう。後で表情や声の様子を思い出せば、友の幸福を願う祈りにも、いっそう熱がこもるものだ▼池田先生は「人間は、自分のことを『わかってくれている人がいる』、それだけで生きる力がわいてくるものです」と語った。相手を理解すること自体が、時に最高の励ましにもなる。腰を据え、友の心のひだに分け入る対話を続けたい。(値)