昭和の時代。ある小さな町に初老の男性が一人で営む、味で評判の豆腐店があった。店主は欲がないのか、全てを買い占めようとする注文や、事業拡大を勧める企業からの話を、いつも断っていた▼「売れるに越したことはないのでは?」と聞くと、店主は言った。「うちの豆腐は庶民の味だから。一時のもうけより、なじみのお客さんちの食卓に並ぶのがふさわしい」。信念である“庶民の味”の追求が、愛される逸品を生みだしたのだと感動した▼病のために幼少の頃から偏見と差別に苦しめられ、十分に学校に行けなかった多宝会の壮年がいる。「世間からは冷たく見捨てられました。でも、学会と同志だけは、私を片時も見放しませんでした」と語る▼彼は、ルビ(ふりがな)の多い本紙で、漢字と読み方を覚えたという。そこで本紙1面のルビを実際に数えてみた。手元には、写真が紙面の半分を占める企画「池田大作先生 四季の励まし」とコラム、寸鉄からなる今月1日付と、ニュース記事が満載の翌2日付。数えて驚いた。両日とも約150カ所と、ルビがほぼ同数だった▼きょう20日は本紙創刊記念日。デジタル化など時代の要請に応える革新を進めつつも、「庶民のため」の新聞を発行していく信念は、今後も不変である。