数十年ぶりに母校の中学校を同窓の友人と訪れた。かつて卒業記念に植樹した桜は、見事な大樹となっていた。2人で感嘆の声を上げた後、しばらく黙って見つめた▼植えてからの数年間は、頼りない若木を見るたび、“無事に育つだろうか”と心配したものだ。それが、幾たびもの酷暑や厳寒の季節を乗り越えた桜は、今や堂々たる風格をたたえていた。その姿は、激動の社会で奮闘する卒業生たちを励ましているようで感慨深かった▼病弱で、収入も不安定な東北の壮年部員がいた。彼は長年、「健康になる」「社会と人の役に立つ仕事に就く」「思う存分、学会活動ができる境涯になる」と祈り続けてきた。そんな中で東日本大震災に遭った▼彼の一念は不動だった。試練に鍛えられるほどに、たくましく人生を開いていった。すっかり頑健になった彼は現在、復興の仕事に携わり、広布のリーダーとしても活躍する。「苦難の渦中は無我夢中でしたが、振り返ると祈りは全部かないました」▼「十」と「八」を重ねると「木」の文字になることから、来る10月8日は「木の日」だという。長い時をかけて成長する根、幹、枝などに支えられ、花が咲き、実がなる。仏法も、その時々の顕益以上に重んじるのは、崩れ得ぬ福運を築く冥益である。(白)