名字の言

名字の言 東京富士美術館に展示されていた一枚の版画 2024年3月13日

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 東京富士美術館(八王子市)の特別展「源氏物語」に足を運ぶと、記念展示「平和と文化の架け橋 富士美40年の軌跡」も開かれていた(特別展は今月24日、記念展示は6月23日まで)▼同館は1983年の開館以来、国内で海外文化交流特別展を50回、世界20カ国・地域で日本美術や西洋絵画等の所蔵品展を50回開催。記念展示は、文化交流で人々の心と心を結んできた「世界を語る美術館」の歩みを紹介している▼一枚の版画に目がくぎ付けになった。二人の若い男女が描かれている。作品解説には、同館創立者の池田先生が欧州を初訪問した61年10月、パリで購入。額装して自室に飾った最初の作品で、二人をユゴーの名作『レ・ミゼラブル』に登場する青年マリユスと乙女コゼットに重ねて眺めた、と▼創立者は述懐している。この作品は「いつまでも若々しく、青年の瑞々しい純粋な持続を、生涯失うまいとする私の心の鏡」「生命の永遠の輝きというものは、このような青春の、純粋な持続にほかならぬと思うからである」▼創立者が美術館の設立構想を示したのは61年6月。その後、各国の美術館を視察し、構想をあたためる中で購入した一枚の絵――東京富士美術館の原点とも言うべき作品に思えた。(川)