今月11日で、アメリカ同時多発テロの発生から17年を迎えた。ニューヨークのテロ事件跡地(グラウンド・ゼロ)では、本年も犠牲者を追悼する式典が行われた。記者は、テロの翌年と10年後に行われた式典に参加したが、残された家族らの悲痛な叫びに触れ、人々の脳裏に刻まれた苦悩の深さを痛感した。
今、当時のファースト・レスポンダー(災害等で負傷した人々に最初に対応する救助隊など)たちの多くが、ビル倒壊による有毒ダストなどの影響で、がんに罹患していることも深刻な問題となっているという。
世界では今なお、テロや紛争の恐怖と向き合いながら生きる人々が少なくない。その背景には大国の対立や過激主義など、さまざまな要因が挙げられるが、個人のレベルでも、文化や宗教の“違い”に固執することが、相手への憎悪と暴力を助長している面も否めない。
「ヘイトクライム(憎悪による犯罪)」は、米同時多発テロ以降、増加の傾向にあり、特にイスラム教徒への差別や暴力が問題となっている。米調査機関「ピュー・リサーチセンター」が昨年7月に公表した調査によると、米在住のイスラム教徒の約75%が「差別されていると強く感じている」と回答した。
憎悪の“負の連鎖”を断ち切るには、先入観を捨て、互いに理解し合う努力が求められる。
池田先生は毎年の「SGIの日」に記念提言を発表。国連を中心に人権、貧困、軍縮等の問題を解決し、テロを防止する具体的なビジョンを示すだけでなく、不信や憎悪によって、もたらされた心の壁を打ち破る「対話」の重要性を強調してきた。
そして、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教、儒教など異なる宗教社会に生きる指導者と対話を重ね、対談集も上梓。「宗教は『人間の幸福』のためにある。教義の面では意見が異なっても、全人類の平和のためには、必ず協調できる」(ワヒド元インドネシア大統領との対談集から)との信念からである。
各国のSGIも、池田先生の「対話」を手本とし、宗教間対話を積極的に推進。昨年11月にはSGIの代表がローマ教皇に謁見したほか、イスラム教徒の多い国でも、地道な社会貢献を通して信頼を勝ち取り、“違い”を乗り越えて心を結ぶ活動を展開している。
明21日は「国際平和デー」。テロのない世界の構築へ、私たちも目の前の“一人”と対話を重ね、その差異を乗り越えることから始めたい。
〈社説〉 9・21「国際平和デー」 2018年9月20日 差異を越え、心と心結ぶ対話
差異を越え、心と心結ぶ対話