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〈大学は平和の門〉第12回 タイ タマサート大学 2018年8月16日 「アジアの灯台」と光る名門学府

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「アジアの灯台」と光る名門学府
タマサート大学を訪れ、現地の学生らと交流する池田先生。学生たちは、胸の前で手を合わせる「ワイ」と呼ばれる合掌の礼で歓迎した(1994年2月7日、首都バンコクで)

 1934年に創立された、タイ王国で2番目に古い歴史を持つ国立タマサート大学。歴代首相をはじめ、各界のリーダーを陸続と輩出してきた名門学府である。同大学創立者のプリディー・パノムヨン博士の言葉――「大学は、知識や学問を希求する民衆の渇きを潤す“泉”のような存在であらねばならない。そして知識を求めることは、教育の自由という理念によって民衆が等しく与えられた権利であり、機会なのである」との信念のままに、民衆に広く教育の機会を開き、同国の発展と人々の幸福に寄与してきた。現在、4つのキャンパスに、3万人以上が学ぶ。
創価大学創立者の池田先生はタイについて、「アジアに幸の光を送る一大拠点であり、アジアの灯台となる使命の天地」との期待を寄せ、同国の人々と信頼を結び、友好を広げてきた。同国には6度訪問。中でもプーミポン前国王と3度会見し、文化に造詣の深い前国王御撮影の写真展や、御作曲作品を披露する音楽会を開催するなど、日本とタイの交流を進めてきた。94年には、タマサート大学で創大等の共催による「世界の少年少女絵画展」を開催。開幕式典には前国王の姉君ガラヤニ王女も御臨席された。
2013年には、文化・教育交流への貢献をたたえ、タマサート大学の「名誉哲学博士号」が池田先生に贈られている。
同大学と創大との交流協定は85年に結ばれ、これまで幾多の学生・教員が往来している。2016年には、タマサート大学内に「創価大学タイ事務所」が開設された。日タイ友好の未来へ、両大学の活発な交流がますます期待される。

タマサート大学3年 シャンラリー・シャーリーラックさん

●母の思い胸に 母国と世界を結ぶ
タイの首都バンコクで生まれ育ちました。
中学生の時、日本に留学した、いとこから、留学中の写真を見せてもらいました。そこには、四季折々の美しい自然や、着物、茶道など伝統文化を体験する様子が。私は瞬時に日本に魅了されてしまいました。高校から日本語を学び、タマサート大学の教養学部日本語学科に入学しました。
当初から日本への留学を志望していましたが、両親に負担を掛けたくなかったので、奨学金制度が充実している創価大学を選びました。留学を経験した先輩から、「創大は教育環境が整った素晴らしい大学だよ」と教えてもらったことも大きな理由です。
昨年、創大に来て最も感動したことは、自然豊かなキャンパスです。授業も、日本語以外にヨガやダンスなど多彩な分野を学ぶことができ、本当に有意義でした。
また、敬愛するプーミポン前国王陛下と、創立者・池田先生との交流の歴史を知り、驚くとともに感銘を受けました。
充実した留学生活を送っていた昨年の秋、突然、母から“末期のがんが見つかった”との知らせが。ショックでした。見舞いのために何度かタイに戻りましたが、そのたびに寮の友人たちは“大丈夫よ”と抱き締め、励ましてくれました。それがどれほど心の支えとなったことか。
闘病の末、母は今年の1月に亡くなりましたが、“どんな困難があっても、強く生き抜きなさい”との母の言葉を胸に、勉学に励みました。
先月、無事に全ての課程を修了し、帰国しました。母国と世界を結ぶという理想に向かって、将来は、空港の管制官として働くか、日本語教師の道へ進みたいと考えています。
創大での1年間は貴重な経験であり、最高の思い出です。世界中の友と結んだ宝の友情を胸に、卒業を目指して学問に励み、日本語の力を磨きます。

交換留学経験者 創価大学42期 津田良恵さん

●ほほ笑みの奥にある“強さ”実感
中学生の頃から、発展途上国への支援に興味を持っていた私は、創価大学の経済学部に進学しました。大学3年次に、躍進する東南アジアの現状を見ようとタイに留学しました。
現地では、近代的な高層ビルやマンションが立ち並ぶ一方で、路地を少し入るとスラム街が広がっているという“貧富が混在する様子”も目の当たりにしました。
留学したタマサート大学の経済学部では、農村地域に2週間泊まり込み、ボランティア活動をするプログラムに参加しました。
そこでは電気や水道、ガスもなく、都市部との生活水準の違いに驚かされました。しかしそれ以上に、互いに助け合うつながりの強さや生活力、人々の温かさがとても印象に残りました。学生の私たちを、心からもてなしてくれた真心は忘れられません。
それまで私は、貧困地域といえば“どこか暗く、支援の手を必要としている場所”というイメージがありました。しかし、底抜けに明るい笑顔を見せる彼らを見て、“幸せは物質的な豊かさでは決まらない”と教えられた思いがします。
タイでは、「マイペンライ(気にしないで)」との言葉をよく耳にします。勉強がうまくいかない時などにも、友達が「マイペンライ!」とよく声を掛けてくれました。不思議とこちらも笑顔になり、ささいなことで、くよくよすることはなくなりました。
常にほほ笑みを絶やさないタイの人々の姿の奥には、小さなことを気にしない、強くおおらかな国民性があるのだと感じました。
2017年に創大を卒業し、現在は、海外にも拠点を持つ日本の食品メーカーで働いています。
タイでの留学経験を生かし、万人の生活に関わる「食」を通して、一人一人の生き方を尊重しながら“当たり前の日常”を少しでも豊かにしたいと思っています。