名字の言

〈名字の言〉 2018年6月30日  新しい命が誕生した喜びを、地域全体で分かち合いたい

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 新しい命が誕生した喜びを、地域全体で分かち合いたい――この願いを込め、世界に一つだけの椅子を贈る取り組みがある。本紙6月12、19日付12面で紹介した、「君の椅子」プロジェクト▼椅子は、確かな腕を持つ家具職人が一流のデザイナーと組み、一脚一脚、手作りする。子どもの生まれた日と名前を刻み、「生まれてくれてありがとう」「君の居場所はここにあるからね」との思いが託されている▼プロジェクトの磯田憲一代表が言っていた。「この椅子は、自分がこの世に誕生したことを肯定してくれた証し。椅子を受け取った子どもたちが将来、『産んでくれてありがとう』との思いを持つ大人に育ってほしい」と。他者に思いをはせる想像力が、地域のつながりを豊かにする▼大阪府北部の地震で、自助・共助・公助の役割を改めて考えさせられた。阪神・淡路大震災で多くの人命を救ったのは「共助」だった。共助とは、つまり「地域のつながり」。災害から復興するスピードの違いは自己資金や行政の力ではなく、地域のつながりの強さ、と指摘する研究者も▼子どもは、人に愛されれば人を愛する大人になる。地域に愛されれば地域を支える大人になる。地域力の低下が叫ばれるからこそ、自分から心通うつながりを広げたい。(川)