広島平和記念資料館に一つの時計がある。「最後の核実験からの日数」がデジタル表示された「地球平和監視時計」。世界のどこかで核実験が行われるたび、数字は「0」に戻されてきた▼“「1」を積み重ねるしかない”。時計を見つめ、カメラのシャッターを切る被爆者がいた。本紙通信員の婦人部員。1945年8月6日、広島が地獄に変わったあの日、当時7歳だった彼女は、爆風で血まみれになった父を見た。後年、ペンの闘士として平和への叫びを一日一日つづってきた▼先日、関西創価中学の生徒に被爆体験を語った。「これが、その時計です」。自身の撮った写真を見せつつ、「一人の心を変える。それが世界平和に通じます」と。人間の出会いと触発が、平和な未来を生み出すと彼女は信じている▼歴史をつくる主役は「民衆」である。池田先生の提唱を受け、SGIは本年、「核兵器廃絶への民衆行動の10年」の第2期を開始した。禁止条約の実現を目指した第1期を経て、同条約を活用した核兵器廃絶へのプロセスを前進させるため、市民社会の声を結集していく▼一日、また一日、縁する一人一人と重ねる“草の根の対話”が、平和へと世界を動かす。その力で1万5000発の“絶対悪”をこそ「0」にしたい。(子)