名字の言

〈名字の言〉 2018年5月4日  青空を悠々と泳ぐこいのぼりのイメージが強かったせいか、幼い頃、鯉が泥水でもすめる魚だと知り驚いたことがある

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青空を悠々と泳ぐこいのぼりのイメージが強かったせいか、幼い頃、鯉が泥水でもすめる魚だと知り驚いたことがある▼生命力が非常に強く、寒さにも負けない。陸に揚げられても、長時間、生きられる。「淡水魚の王様」と呼ばれるゆえんだろう。そのたくましさは、中国の有名な故事「竜門の滝」にも描かれる。「竜門と呼ばれる滝を登り切った鯉は竜になる」という、立身出世を象徴する伝説だ▼滝の落差は300メートル以上。流れは、放たれた矢よりも速い。その上、漁師や飢えた鳥たちから命を狙われる。日蓮大聖人はこの故事を通して「仏になるみち(道)・これにをと(劣)るべからず」(御書1560ページ)と仰せだ。困難に負けず、人間として向上し続けることは、それほど難しい▼女手一つで4人の息子を育て、創価の学びやに送った母は常々、こう教えてきたという。「世の中を器用に泳ぐような大人にならなくていい。泥まみれになって人に尽くす人生を生きなさい。私たちを支えてくださった、学会の皆さんのように」と▼子らに指し示すべきは“栄誉栄達”への登竜門そのものではない。利害損得の渦巻く社会にあって、「何のため」の理想を忘れず、人間性の高みへのぼり続けることの美しさである。たくましい鯉のように。(之)