名字の言

〈名字の言〉 2018年7月2日  保険の外交員として働き始めた青年は目覚ましい実績を上げた。

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 保険の外交員として働き始めた青年は目覚ましい実績を上げた。会社は支店長に抜てきしようとしたが、彼はその話を断り、師から提案された私塾を始めた。青年とは戸田城聖先生である▼1923年(大正12年)、戸田先生は師匠の牧口常三郎先生が提唱する教育法を実践する場として、私塾「時習学館」を開設。算数のテキストをまとめた著書『推理式指導算術』は当時の受験生の間で人気を博し、100万部を超えるベストセラーになった▼ゲーテ研究の大家・山下肇氏は時習学館で学び、苦手だった算数の力をつけた。氏は戸田先生から教わったこととして、「打てば響くような人間になれ」「筋を通す人になれ」などを挙げている。受験のための塾でありながら、その教育は塾生の人間的成長にも大きな影響を与えた。生前、山下氏は『時習学館と戸田城聖』(潮出版社)に万感の思いで書き残している▼若い時に受けた人間的な関わりや精神的触発は、心の奥深くに刻まれるものだ。普段は思い出さなくても、悩みや困難に直面するたび胸によみがえり、人生を支えてくれる▼励ましも、改まったり言葉を飾ったりする必要はない。思いを込めた一言は、必ず友の力になる。青年の月・7月。次代を担う若人に、真心のエールを送ろう。(芯)