「あいさつと言葉」というタイトルの作文がある。昨年、沖縄県の作文コンテストで優良賞を受賞した未来部員の作品だ▼少年が住むのは沖縄の多良間島。人口1000人ほどで島民のほとんどが顔見知りという。小学校への登下校中、誰彼となく地域の人からあいさつされた。だが当初、少年は恥ずかしさから受け答えできなかった▼それでもあいさつを続けてくれる温かさに心を動かされ、少しずつ返せるように。すると「スッキリして自分自身、気持ちよくなる」ことに気付き、学校でも自ら友達に声をかけるようになった▼あいさつ一つにも人の心を開く力がある。仏典には釈尊が“自分から声をかける人”であり、親しみをもってあいさつを交わしたと記されている(片山一良訳『長部(ディーガニカーヤ)戒蘊篇Ⅰ』大蔵出版)。その人徳によって、人々は“釈尊を待つのではなく、我々から会いに行こう”と仏道を求めていった▼池田先生は「声を出す。声をかける。声を届ける。それが『善縁の拡大』につながる」と。相手の反応はどうあれ、自ら声をかける人の振る舞いは輝いている。先の少年に“声をかけ続ける存在”がいたように、自分から言葉を発し、地域に善縁を広げる人でありたい。(礼)