名字の言

〈名字の言〉 2018年7月1日  山形で先日行われた第76期名人戦七番勝負の第6局。

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 山形で先日行われた第76期名人戦七番勝負の第6局。佐藤天彦名人が羽生善治2冠に勝利を収め3連覇を達成した▼佐藤氏は一昨年、史上4番目の若さ(28歳)で名人位に。その対局は「積み重ねの逆転術」と評される。派手さはないが不利な局面からも一手一手、にじり寄るように攻め続けて勝利をつかむ。氏は「形勢が悪くなってからこそが本番だとさえ思います」と(『理想を現実にする力』朝日新書)▼人生もまた、思わぬ難局に遭遇することがある。その時にひるんで引くか、そこから粘り強く努力を重ねていけるかで、未来は大きく変わる▼30年の経験を誇る碁石職人の壮年部員。51歳の時、会社から全く畑違いの職場に異動を命じられた。最初は戸惑ったが、必ず意味があると思い、不慣れな接客にも懸命に取り組んだ。そして7年後、再び職人に。以前は若手を叱るばかりだった彼は今、ユーモアを交えて助言を送る。「周囲がよく見えるようになりました。あの7年間の経験のおかげですね」と笑顔で。本年、宮崎県の伝統工芸士になった▼池田先生は「困難がないことが幸福なのではない。困難に打ち勝つなかに幸福があるのだ」と。どんな人にも困難は訪れる。それに粘り強く挑み、たくましく成長するのが信仰者である。(誼)