名字の言

〈名字の言〉 2017年1月22日

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マレーシア・ボルネオ島の先住民プナン族は、「ありがとう」を意味する言葉を持たないらしい▼“互いに助け合うのは当然”と皆が思っているから、言う必要がないのだという。ただ、多様な考えを持つ人々が触れ合う社会では、なかなかこうはいくまい。人々の心を潤す「ありがとう」は、やはり大切である▼東京のある少年部員が昨年の「きぼう作文コンクール」でホイットマン賞(詩部門)に輝いた。題名は「ありがとう」。彼は先天性の脊髄疾患により、手術と入院を繰り返してきた。不可能と思われた歩行も、小学1年の今では、杖を使って歩けるまでに。家族や同志の励ましに包まれながら、リハビリに挑戦する日々だ▼彼は詩につづった。「ぼくはなんにでも、ありがとうをいうよ」。夏には鳴いているセミたちに。春には桜、秋には紅葉、冬には雪に。「いつもいうのは、かぞくとがっこうのともだち」「あと、のみものとコップとつくえと、もう/ちきゅうのぜんぶ!/ついでに、うちゅうのぜんぶにも!」▼「有り難う」は元来、“そうあることがまれだ”との意味。この、当たり前を当たり前と思わない心は、困難を乗り越える中で育まれる。生きる喜びを広げ、周囲にも笑顔を送る。感謝できる人は幸福の灯台である。(之)