「東洋のデュマ」と呼ばれ、先日94歳で生涯を閉じた作家・金庸(本名・査良鏞)氏。氏の武俠小説は中国語圏で絶大な人気を博し、著書の発行部数は3億冊以上ともいわれる▼1955年にデビュー作『書剣恩仇録』を発表。だが、72年に書き上げた『鹿鼎記』を最後に、氏はまとまった作品を世に出すことはなかった。世間が“次に金庸が著すのは、人生の総決算ともいうべきものだろう”と注目する中、出版されたのが、池田先生との対談集『旭日の世紀を求めて』だった▼この対談は、中国語で『月刊明報』『生活週刊』に同時連載された。翻訳を担当した孫立川博士は、二人の対談について、こう述べている。「金庸先生にとって、池田大作という、ようやく語るに足る“人物”に出会って、あふれる思いが噴出した」▼金庸氏は対談の中で、池田先生を尊敬する理由の一つとして、「『真理のための勇気』を堅持し、多くの悪意や偏見に満ちた世論の圧力に屈しない」ことを挙げた。氏自身もまた、文化大革命などの折、批判を恐れず、「民衆の側に立つ言論」を貫いた▼氏は語った。「人に憎まれもせず、焼きもちも焼かれないような人は、大した人物ではないのです」。民衆のために振るった正義のペンに改めて敬意を表したい。(芯)