【北京】創価学会代表訪中団の総団長である原田会長ら代表は25日午前9時20分(現地時間)から、王岐山国家副主席と北京・中南海で会見した。約50分にわたった語らいでは、王副主席が、池田大作先生の国交正常化提言の遠見と、50年にわたる創価学会の民間交流を高く評価。提言50周年の今月8日に完結した池田先生の小説『新・人間革命』が、平和の希求を主題としていることなどが話題となり、世界の平和と各国間の関係構築に果たす民間交流の役割等を巡って語り合った。(2・3面に関連記事)
「ようこそ、いらっしゃいました」
王岐山副主席はにこやかに、総団長の原田会長、団長の谷川主任副会長、副団長の永石婦人部長ら、訪中団の代表一人一人と握手を交わした。
冒頭、「10月1日の国慶節をお祝い申し上げます」と原田会長があいさつすると、王副主席は「創価学会の訪中団は中秋の名月の当日(24日)に到着されました。中秋節は中国でも非常に重要な日です。中国政府を代表して心より歓迎します」と和やかに応じた。
さらに続けた。
「今回の訪中団には、中日の平和友好条約締結40周年の年に当たるという意義に加え、もう一つの意義があります。それは池田名誉会長が1968年に国交正常化提言を発表されて50年の記念すべき年だということです」
原田会長は、訪中団が各方面・県のリーダーで構成され、帰国後、日本全国に広がるであろう波動の大きさを強調。招へいに感謝するとともに、池田先生から王副主席への御礼の言葉を伝えた。
さらに池田先生の初訪中(74年)に随行した際、民衆の活力に触れた先生が、“中国は将来、必ず偉大な国になる”と述べた事実を紹介しつつ、毛沢東主席をはじめ歴代指導者のもと、その言葉通りの大発展を遂げた中国の姿に、心からの敬意を述べた。
話にうなずきつつ、王副主席は応じた。
「中日友好を果たしてこられた名誉会長は偉大な社会活動家であり、指導者であられる。今年で90歳を迎えられたと伺っていますが、名誉会長のますますの健勝をお祈りしていることをぜひ、お伝えいただきたい」
――習近平国家主席を支える王副主席は70歳。2012年から昨年まで、中国共産党の最高指導部である中央政治局常務委員。今年3月、国家副主席に就任した。
1997年に始まるアジア通貨危機では、広東省の副省長として、香港の経済危機が広東に波及することを防ぐ。北京市長を務め、北京五輪(2008年)を成功に導いた。
王副主席「『実践』の真価は歴史の試練で分かる」
“難関の国家事業や国難には必ず王岐山の姿がある”との評は、決して誇張ではない。
だが、実務一辺倒ではない。かつて歴史研究者であった経験と幅広い学識をもとに語る歴史観、世界観にも定評がある。その懐の深さが垣間見える、この日の会見となった。
語らいで王副主席は「貴会は中日友好の初心を忘れず、時代を貫いて非常に大切にされてきました」と述べ、創価学会の平和と中日友好への行動を「個人であれ、党派・団体であれ、実践こそ真理を検証する唯一の基準です」と評価。
さらに学会の創立当時、日本は軍国主義の時代であり、学会の主張は、日本に大きな災いをもたらした軍国思想とは対極にあったと述べつつ、自身の歴史観の一端を披歴した。
「平和を求める人々こそが大事です。歴史の流れを見れば、全ての戦争で、代償を払うのは大衆です。平和か戦争かという選択は人類の発展に関わっているし、人々の願いに深く関わっています」
その話を受けて原田会長は、池田先生が54年間書きつづり、「9月8日」に完結した小説『人間革命』『新・人間革命』も、その底流にあるのは戦争と平和の問題に対する強い思いであり、平和希求の叫びであると紹介。
「路の遠きを怕れず、只志の短きを怕る」との言葉、池田先生の“政治・経済を船とすれば、民衆交流こそ、それを動かす海である”との信念を紹介しつつ、民衆レベルの草の根交流を今後も貫いていきたいと語った。
王副主席は「私たちには中日友好を世々代々に受け継いでいくという共通認識があります」と応じ、政治、安全保障、経済、文化、教育、生態・環境などの各分野で中日両国の交流を推進し、共通認識をつくるべきであると強調。
「実践の真価は、時間や歴史の試練を経なければ分からない。その意味で、名誉会長の国交正常化提言は50年という歴史を経て、その重要性が証明されました。まさに遠見であると思います」と重ねて高く評価し、中日関係は紆余曲折を経たが、今、変革の時を迎えていると、関係改善の伸展に意欲を示した。
加えて、かつて日本の村上春樹氏、三島由紀夫氏の小説を読んだ経験を踏まえ、「どんな時代、どんな国にあっても、『右』も『左』の主張も、『中道』の主張も存在している。平和を生み出そうとする力と、戦争へ誘おうとする力は、いわば隣同士で共存しているようなものである。『右』の主張がなければ『左』の主張も生まれないともいえる」と論じた。
原田会長は「私たちは日中友好の『中道』を歩みたい」と述べ、日中平和友好条約締結40周年の本年に繰り広げてきた「女性訪中団の派遣」「全青連(中華全国青年連合会)の招へい」「創価大学での日中新時代フォーラム」などを紹介。
さらに来月は、復旦大学で池田大作思想国際学術シンポジウム、清華大学では東京富士美術館所蔵の「西方絵画500年」展が開かれ、2020年には2度目の舞劇「朱鷺」の民音公演が計画されていることを披露した。
王副主席は、政治面でも、李克強総理の訪日(今年5月)が成功し、先日はロシアで習主席と安倍首相の会見が実現するなど、中日関係が良い方向に向かっていることを「両国政府が通るべき道であり、理性の勝利である」と強調。
「今回、皆さんとお会いしたのも、長きにわたり中日友好に尽力してこられた団体という認識を持っているからです」と述べつつ、訪中団がこの後、地方の主要都市に分かれて交流することは重要であり、この日は代表との会見となったが、訪中団の皆さまによろしくお伝えいただきたい、と述べた。
さらに王副主席が、関西を中心とした今夏の台風被害、北海道の地震に対し、中国政府を代表してお見舞いを述べると、原田会長は同席した分団長の山内関西長、日下北海道長を紹介しつつ、厚情に感謝した。
最後に王副主席は語った。「こうしてお見舞いを述べられるのも、両国間の友好があればこそです」「きょうの会見は『戦争と平和』から話が始まり、自然災害の話で結ばれますが、戦争は人間が起こす人災であり、自然災害は天災です。人類の歴史とは一面、このように人災と天災の連続ともいえます」
深く同意した原田会長は「だからこそ、人が起こす災いは防がねばなりません」と述べ、池田先生の小説『人間革命』の主題が「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命の転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命の転換をも可能にする」であったことを紹介。平和と日中友好へ進む創価学会の固い決意を述べて、約50分間の充実した語らいを終えた。
なお会見の模様は、中国中央電視台、人民日報をはじめ、中国の主要メディアで大きく報道された。