琉球(現在の沖縄)で初めての学校「明倫堂」が設立されてから、今年は300年の佳節。設立に尽力したのが、人徳の高潔さから「名護聖人」と呼ばれた程順則である▼彼は両親や弟だけでなく、妻や子どもにまで先立たれた。たび重なる肉親との死別という悲哀を乗り越え、学問に心血を注ぎ、“人間としていかに生きるか”を求め続けた。琉歌(沖縄の短歌)にも、人の生き方をうたった歌を数多く残している▼その一首に「胸にある鏡/朝夕思い詰みり/塵積むてからや/磨きぐりしゃ」と。「胸にある鏡(真心、良心)をいつも磨きなさい。塵が積もってからでは鏡も磨きにくいものである」との意味である(『名護親方・程順則の〈琉球いろは歌〉』ボーダー新書)▼日蓮大聖人御在世の鎌倉時代、鏡といえば銅鏡が一般的だった。すぐに曇ってしまうため、鏡として使用するには、絶えず磨く必要があった。大聖人は、曇った鏡を迷いの生命、磨いた明鏡を悟りの生命に譬え、「日夜朝暮に又懈らず磨くべし」(御書384ページ)と仰せだ▼自身の人間革命の挑戦に、“もうこれでいい”という終着点はない。日々、新たな決意で、わが「胸にある鏡」を輝かせていく――その中で、何ものにも負けない不動の人格が鍛え上げられる。(芯)