ある中学校の吹奏楽部の練習を見学したことがある。町で唯一の中学校で、部員も初心者が多い中、新たな顧問になって数年のうちにコンクールで日本一に上り詰めた。さぞかし特別な指導法があるのだろうと興味津々でいたが、その期待はあっさりと裏切られた▼見た目の練習は、多少でも吹奏楽をかじった人にとっては当たり前の内容ばかり。「秘術なんてないですよ」と笑う顧問の言葉が信じられず、部員たちに話を聞いて回り、ようやく答えが分かった▼一つは「○時から全体練習」と板書された「○時」の意味。それは“集合時間”ではなく、皆が個人練習を終えて、最高の状態で全体練習に臨む“開始時間”を指していた。各人が“自分をピークに導く練習法”をあみ出しているという▼もう一つは「何のため」を自分でとことん考えること。“この練習は何のため”から、“何のために私は部活動を頑張るのか”などにも及ぶ。「広く、深い目的観を持つ自分づくりのためです」と顧問は教えてくれた▼日々の勤行・唱題、毎回の訪問・激励も一見、同じ行為の繰り返しに思える。だが、その一回一回に「臨終正念」の思いで真剣に臨み続けた人は、人間革命の実証に輝き、友の心を変え、時代や社会を希望と幸福の方向へ変革していける。(白)