名字の言

〈名字の言〉 2018年10月23日  コラムニストの竹内政明さんが、若き日に北海道大学を受験した思い出を講演で紹介した。試験の後日、合否電報が届く。

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コラムニストの竹内政明さんが、若き日に北海道大学を受験した思い出を講演で紹介した。試験の後日、合否電報が届く。「ポプラナミキユキフカシ サイキヲイノル」。つまり不合格。浪人して翌年、再挑戦で合格した際の電報は「クラークホホエム」だった▼合格者への電文8文字に対し、不合格者には倍以上の18文字。この出来事を通し、竹内さんは感じたという。悩みに沈む人には、日が当たる人以上に言葉が必要だ、と▼7年ほど前、東日本大震災による津波で自宅を失った壮年に、台湾の慈善団体から支援の品が送られた。その中に一人の少女が書いたメッセージカードが。「身心」「健康」「福」……漢字から、復興を祈ってくれているのだと察した▼彼は、その言葉を心の支えにした。昨年、被災地に慰問演奏で来たある楽団員が、カードにまつわるその話を聞き、“来夏の台湾公演に同行しないか”と彼を誘った。今年8月、台湾を訪れた彼を待っていたのはカードを書いた少女。日本の関係者や台湾のテレビ局の協力もあって実現した“サプライズ”だった▼初対面にもかかわらず、この出会いを彼は「再会」と言った。少女の言葉にどれほど励まされてきたのかが分かる。言葉には心が宿る。国境や世代を超えて、共鳴していく。(白)