法悟空 内田健一郎 画 (6028)
漆黒の空が、次第に紫に変わり、うっすらと半島の稜線を浮かび上がらせる。やがて金の光が東の空に走り、海はキラキラと輝き、さわやかな五月の朝が明ける。
五月五日、山本伸一は、神奈川文化会館から、夜明けの海を見ていた。この日は、「こどもの日」で国民の祝日であり、また、「創価学会後継者の日」である。
伸一は、神奈川の幹部から、クルーザーを所有する地元の学会員の方が、横浜港周辺を案内したいと言ってくれていると聞き、三十分ほど、乗せてもらうことにした。船の名は「二十一世紀」号である。
海から見た神奈川文化会館もまた、すばらしかった。この海は太平洋につながっているのだと思うと、二十一世紀の世界広布の大海原が見える気がした。彼の胸は躍った。
伸一は、前日の四日には、神奈川県の功労者の代表と懇談し、この五日も、草創の向島支部、城東支部の代表からなる向島会、城東会のメンバーと語り合い、敢闘の労をねぎらった。功労者を中心とした伸一の激励の車輪は、既に勢いよく回転を開始していたのだ。
彼は、できることなら、二十一世紀を担う後継の青年部、未来部の集いにも出席し、全精魂を注いで励ましたかった。また、神奈川文化会館の前にある山下公園には、連日、多くの学会員が集って来た。そうした同志と会合をもち、力の限り、讃えたかった。しかし、今、それは許されなかった。
“ならば、未来、永遠にわたる創価の魂を、後継の弟子たちに形として残そう!”
この日、彼は、広宣流布の師匠・戸田城聖の真正の弟子として、わが誓いを筆に託して、一気呵成に認めた。
「正義」――その右下には、「われ一人正義の旗持つ也」と記した。
“いよいよ本当の勝負だ! いかなる立場になろうが、私は断じて戦う。たった一人になっても。師弟不二の心で断固として勝利してみせる。正義とは、どこまでも広宣流布の大道を進み抜くことだ!” (この章終わり)