小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 誓願 百十八 2018年8月15日

 法悟空 内田健一郎 画 (6448)

 山本伸一は一九八三年(昭和五十八年)の香港訪問で、メンバーに力強く呼びかけた。
「皆さんのなかには『九七年問題』で、“香港はどうなるのかな”と、心配されている方もおられるかもしれない。しかし、私は、全く心配はないと訴えておきたい。堂々と、この愛する香港の地で、自由にして平和、文化、そして国際的発展に薫るこの香港の大地で、妙法に照らされ、守られながら、尊い一生を送っていただきたい」
「返還の『九七年』以後も、これまでの何倍も賑やかに、何倍も楽しく交流しよう。未来永遠、一緒に勝利の歴史をつくろう!」
彼は、これまで多くの香港の有識者、またSGIメンバーと語り合ってきたなかで、香港の大発展をもたらしてきたのは、底知れない「人間の活力」であり、人びとに脈打つ「希望の力」であると実感していたのである。
これまでの「何倍も楽しく」との言葉に、香港の同志は、勇気を得た。
八四年(同五十九年)十二月、中国とイギリスは中英共同宣言を発表し、九七年(平成九年)七月に香港は中国に返還され、中国の特別行政区になり、返還後五十年は、社会主義政策は実施しないことが示された。資本主義は維持され、一国二制度となるのである。それでも、不安が拭い切れずに、カナダ、オーストラリアなどに何十万もの人たちが移住していくことになる。
伸一は、香港の未来を思いつつ、中国の要人たちと会談し、歴代の香港総督などとも交流を重ねてきた。
そして、今回の九五年(同七年)十一月の香港訪問では、著名な作家で、日刊紙「明報」を創刊し、「良識の灯台」として長年、世論をリードしてきた金庸と会談した。彼は、返還後の香港の社会体制を決める「香港基本法」の起草委員会の委員も務めていた。
二人は、「香港の明日」「文学と人生」をはじめ、幅広いテーマで五回の語らいを重ね、九八年(同十年)、対談集『旭日の世紀を求めて』(日本語版)が発刊されている。

 

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