法悟空 内田健一郎 画 (6462)
十一月二十七日夕刻、山本伸一の一行は、シンガポールから、マレーシアの首都クアラルンプール国際空港に到着した。伸一の同国訪問は、十二年ぶり二度目である。
この十二年間で、マレーシア社会も、SGM(マレーシア創価学会)も大いに発展していた。クアラルンプールには超高層ビルが増え、なかでも一九九八年(平成十年)に完成したペトロナスツインタワーは、ビルとして世界一の高さ(当時)である。
学会の会館も充実し、クアラルンプールの中心地には、地上十二階建てのSGM総合文化センターが翌二〇〇一年(平成十三年)の完成をめざし、建設が進んでいた。また、マレーシア全十三州のうち十二州に、立派な中心会館が整備されることになっていた。
二十九日には、マレーシア最大の総合大学である国立プトラ大学から伸一に名誉文学博士号が贈られ、同大学で、名誉学位特別授与式が厳粛に挙行された。
その式典は、真心と友情にあふれていた。
「推挙の辞」を朗読したのは、女性教育者のカマリア・ハジ・アブ・バカール教育学部長である。彼女は、思いの丈を表現しようと、随所に自作の詩を挟んだ。さらに、突然、マレー語から、日本語に変わった。
「先生! あなたは偉大な人です。『世界平和』という、先生の生涯の夢が、達成されますように――」
“すべてマレー語では、私の本当の思いは伝わらないのでは”と考え、日本語を覚え、最後に、直接、日本語で語ったという。
ペナン州総督のトゥン・ダト・ハムダン・ビン・シェイキ・タヒール総長から名誉学位記が手渡され、伸一の「謝辞」となった。
「真実の友情の対話は、民族・国境を超え、利害を超え、あらゆる分断の壁を超えます。
そして、多様性を尊重し、活かし合いながら、寛容と共生と創造の道を、手を携えて進んでいくことこそ、最も大切な道なのであります。なかんずく、教育が結ぶ友情こそが、平和と幸福を護る最も堅固な盾であります」