小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 誓願 五十八 2018年6月2日

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 法悟空 内田健一郎 画 (6388)

 対話主義の根底には、万人尊重の哲学と人間への信頼がある。そして、それは、すべての人が等しく「仏」の生命を具え、崇高なる使命をもっているという、万人の平等を説く仏法の法理に裏打ちされている。
 しかし、日顕ら宗門は、その法理に反して、日本の檀家制度以来の、僧が「上」、信徒は「下」という考えを踏襲し、それを学会に押しつけ、隷属させようとしたのだ。
 日蓮大聖人が根本とされた法華経は、「二乗作仏」や「女人成仏」が示すように、身分など、あらゆる差別と戦い、超克してきた平等の哲理である。それゆえに、世界の識者たちも、生命の尊厳を説き、人間共和と人類の平和を開く法理として、仏法を高く評価しているのである。
 大聖人は、「僧も俗も尼も女も一句をも人にかたらん人は如来の使と見えたり」(御書一四四八ページ)と、僧俗も、性差も超えた、人間の平等を明確に宣言されている。
 大聖人の仏法は、民衆の幸福のためにこそある。もしも、宗門によってその根幹が歪められることを放置すれば、横暴な宗門僧らの時代錯誤の権威主義がまかり通り、不当な差別を助長させ、混乱と不幸をもたらしてしまうことになる。
 まさに、「悪人は仏法の怨敵には非ず三明六通の羅漢の如き僧侶等が我が正法を滅失せん」(同一八二ページ)と仏典に説かれているごとく、正しき仏法が滅しかねないのだ。
 さらに、学会が、深く憂慮したことの一つは、宗門の文化などに対する認識である。
 彼らの文化に対する教条主義的、排他的な態度は、ベートーベンの第九「歓喜の歌」についてだけではなかった。かつて、『大白蓮華』で、「英国王室のローブ展」の展示品・ガーター勲章を紹介したところ、そこに「十字」の紋章が施されているのを見て、役僧がクレームをつけてきたのである。
 各国、各地、各民族等の、固有の伝統や文化への理解なくしては、人間の相互理解はない。文化への敬意は、人間への敬意となる。

 小説『新・人間革命』語句の解説
 ◎二乗作仏など/二乗作仏は、法華経迹門において二乗(声聞・縁覚)の成仏が釈尊から保証されたこと。女人成仏は、同じく法華経において、それまで成仏することはできないとされてきた女性が成仏すること。
 三明は、仏、阿羅漢が具えている三種の超人的な能力のこと。特に仏の場合は三達ともいう。六通は、六神通のこと。仏や菩薩などが具えるとされた六種の超人的な能力。