名字の言

〈名字の言〉 2018年7月30日  詩人の吉野弘さんの「奈々子に」という作品には、父として“娘にあげたいもの”が二つ記されている

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詩人の吉野弘さんの「奈々子に」という作品には、父として“娘にあげたいもの”が二つ記されている。一つは「健康」。もう一つが「自分を愛する心」である▼「自分を愛することをやめるとき/ひとは/他人を愛することをやめ/世界を見失ってしまう」。だから大切なのは、「かちとるにむづかしく/はぐくむにむづかしい/自分を愛する心だ」と(『吉野弘詩集』ハルキ文庫)。読む側が年齢を重ねるにつれ、味わいが増す詩の一つだ▼福島県のある婦人部員は昨年、夫を病で亡くした。夫の唯一の心残りは、数年来、音信が途絶えた長男のこと。葬儀の後、ようやく再会した長男は、離婚と経済苦から自暴自棄になっていた。そんなわが子に、母は言った。「自分を大切にするのよ。それが、お父さんとお母さんの、ただ一つの願いなの」▼長男は涙しながら何度もうなずいた。そして、父の広布への遺志を継ぐと誓った彼の御本尊授与式には、現在暮らす神奈川の同志も駆け付けた。長男は今、創価の庭で生き生きと活動に励む▼ありふれた「自分を大切に」という言葉だからこそ、子の幸福を願う親の慈愛がにじむ。何があっても、自分で自分を諦めない――この限りない希望の哲学を、全ての子どもたちに伝えたい。(閃)