〈虹を懸ける〉

〈虹を懸ける〉 池田先生とカナダ③ 2018年7月15日 一人の力は無尽にして無窮

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一人の力は無尽にして無窮

 カナダの友が永遠の指針として心に刻むのが、池田先生の長編詩「ナイアガラにかかる虹」である。
師弟の絆とカナダ広布の使命がうたわれた同詩は、1987年6月10日、「婦人部の日」に寄せて贈られた。
先生がカナダ初訪問時に激励した一婦人。その一人から開かれた広布の歴史を通し、目の前の「一人」が、いかにかけがえのない存在であるかが、詩の中で述べられている。

一人は一人にあらず
一人の力は
ただ一人にて
留まることなし
人間の秘めたる
妙なる力用は
無尽にして
無窮なり

首都オタワで圏婦人部長を務めるモニカ・バックマンさんは、先生の振る舞いが、この詩の一節そのものであると実感する。
93年9月、女子部のメイプルリーフ・グループ(日本の白蓮グループ)として、先生をモントリオール文化会館で迎えた。
ロビーのドアを開けると、先生は胸に手を当て、深々と一礼を。陰の役員にも、ねぎらいの言葉を掛けた。
バックマンさんは回想する。「先生が声を掛けられるたび、一人一人の心がパッと開けていくように見えました。一瞬の出会いに、どこまでも心を尽くされる――私もそうありたいと思いました」
保健行政の財政計画などに携わるバックマンさん。2012年、政府の方針変更に伴って大規模な人員削減が行われ、彼女の部署でも約30人が職を失った。
元同僚を元気づけつつ、皆の再就職に奔走し、多くの人が新たな仕事に就くことが。
その献身や実績が評価され、バックマンさんは三つの賞を受賞。他の機関に再就職した人の中には、彼女の生き方に心を打たれ、信心した友もいる。
「信心は“希望をつくる実践”だと思います。どんな境遇の人にも希望を送っていける――その勇気と自信が学会活動の中で身に付いていたんです」
オンタリオ州をはじめ、『赤毛のアン』の舞台であるプリンス・エドワード島等、広大な地域で活動するバックマンさん。今日も希望の人生を広げる。

世界広布の証

 移民大国のカナダでは、1971年に世界で初めて、多様な文化を平等に尊重する多文化主義政策が施行された。毎年20万人以上の移民を受け入れ、3500万人の国民の約2割が移民といわれる。
多文化共生の地で広布に尽くす意義を、先生は長編詩に詠んだ。

あなたたちの舞台
カナダの天地には
世界のあらゆる民が
集っている
ゆえに
この国土の広布は
即 一閻浮提広布の
証なりと
私は信ずる

カナダSGI壮年部長のイアン・マッティンソンさんは、「友人との対話や社会での実証など、その一歩一歩が世界広布を証明するもの」と胸を張る。
西部のカルガリーに在住し、週末を中心に各地へ激励に走る。
93年9、10月、先生がバンクーバーを訪問した折、運営の役員を務めた。その中で、先生が電光石火で激励の手を打つ姿に、「先生は世界中のメンバーを常に気に掛け、わが事のように案じてくださっている。ここから世界広布が始まっている」と感じた。
励ましのドラマの数々に、師弟の崇高さを垣間見たというマッティンソンさん。自分の行動で、師弟を伝えていこうと決めた。
レクリエーション施設の管理者として奮闘し、同僚を陰で支え、難題を克服してきた。
2001年9月、マッティンソンさんに試練が訪れる。前年に生まれた長男が目のがんに襲われたのだ。
すぐに同志が駆け付けた。「長男が人生に価値を感じられるように、いつもそばに寄り添ってくれました」
翌年に右目を摘出。幾多の困難にも弱音を吐くことなく、現在は音楽活動に精を出す。
本年3月の世界青年部総会。同じ病と闘う大阪の未来部員が、朗らかにドラムを響かせる姿に、涙があふれて止まらなかった。
「宿命を使命に変える同志がいることに、感謝は尽きません。師弟に生きる人間の強さを示したい」と誓う。

自らつかむ

 長編詩の執筆に前後して、先生はカナダの友を激励。1987年8月には来日した友を聖教新聞本社に迎え、屋上で花火を一緒に鑑賞したこともあった。
マッギル大学のスミス教育学部長ら、カナダの識者とも会見。86年に同大学で「核兵器――現代世界の脅威」展が開かれたことなどにも触れ、平和の未来を展望している。
カナダは平和意識の高さで知られる。SGIでも数々の啓発運動に取り組んできた。
オタワのグレン・ターナーさん(本部長)も、中心者の一人。同地での「核兵器なき世界への連帯」展には、軍縮専門家や高校生の代表が参加し、核軍縮を討論する“模擬国連”なども活発に行われている。
英国出身のターナーさん。大学を2度留年し、退学。不本意な職場で働いていた時、学会の集いに誘われた。
「勤行・唱題の力は明らかでした。幸福は自らつかむものだと知り、人生への無責任な態度を改めました」
復学し、英語圏とフランス語圏の懸け橋になろうと決意。念願のフランス語教師に。
赴任当初は暴力行為等が頻発したが、生徒の将来を祈ると、クラスの“問題児”が善知識の存在に思えた。
生徒一人一人の可能性を信じ抜くターナーさんの姿に、唱題を実践する同僚も数多い。

色彩を生かす

 池田先生は、さまざまな人種や文化が共存する“世界の縮図”で活動する友に、長編詩で呼び掛けている。

多種多様な
相違のなかにあって
一人ひとりの
色彩を生かしつつ
美しき
調和の虹をかけゆく
包容と忍耐の
リーダーであって
くれ給え

世界有数の多民族都市トロントは、人口の約半数が移民。ダウンタウンで地区婦人部長を務めるアヤコ・オチさんは、初めて参加した座談会の雰囲気をよく覚えている。
「多様な人種の方々が、きれいな発音で勤行する光景が忘れられません。『色心不二』や『十界論』を学び、仏法が論理的であることに感動しました。“ずっと探していたものだ”と直感しました」
奈良出身のオチさんは97年にトロントへ。2005年にSGIの一員となり、脳波の専門医として活躍する。
研修医の講習等も担当し、外国人ながら最優秀教員賞にも輝いた。
ダウンタウンの地域では、カナダをリードする弘教を達成。09年にオチさんが所属するバンガード地区が誕生し、昨年も新たな地区が生まれている。
15年9月に来日した折、オチさんは研修会に参加したメンバーと共に池田先生から激励を。先生と初の出会いを刻み、広布に生きる誓いを固めた。
――師の限りない期待を抱き、希望の対話に歩くカナダの友。
先生の長編詩は、その尊き挑戦をたたえるように結ばれ、友の未来を示している。

おお!
燦たる陽光躍り
轟々たる大瀑布に
目にも綾なる七色の
美しい虹がきらめく
我が愛する
カナダの友の前途を
祝福するかのように

(②は7月7日付に掲載)